食洗機、ロボット掃除機、乾燥機。
共働き家庭の救世主、もはや現代の「三種の神器」と言っても過言じゃないですよね。
私も、これらの家電にどれだけ助けられてきたか、数え切れないほど。
「これがあればもう家事は完璧!」って、期待に胸を膨らませて導入した人も多いはず。
でも、ちょっと待って。
それだけハイテクな家電を揃えても、あなたの家事ストレス、本当に減っていますか?
時短になったはずなのに、なぜかいつも時間に追われている気がする。
家事タスクが減ったはずなのに、心の中のモヤモヤは一向に晴れない。
その「なぜ?」、ずっと気になっていませんでしたか?
私も同じです。今日は、そのモヤモヤの核心に一緒に迫ってみましょう。
家電頼みで本当に「家事」は消えたのか?
食洗機、ロボット掃除機、乾燥機。これらは確かに、私たちの肉体的な負担を劇的に減らしてくれました。手で洗っていた食器が、床に這いつくばって掃除していた時間が、洗濯物を干して取り込む手間が、あっという間に過去のものになった。最初は本当に感動しませんでしたか?「これでやっと自分の時間が持てる!」「夫婦の会話も増えるかも!」って。私もそうでした。まさに夢のような家電ライフが始まる、そう信じて疑いませんでした。
でも、多くの共働き家庭が、この「夢」の裏側に潜む別の「現実」に直面しているのを知っていますか?
家事を「しない」と「任せる」の大きな違い
先日、私が取材した共働きのご夫婦、佐藤さんご夫妻(仮名)の話を聞いて、その「現実」が浮き彫りになりました。佐藤さんは小学3年生と保育園児のお子さんを持つ30代の奥さん。IT企業で営業職としてフルタイムで働くパワフルな方です。数年前にマンションを購入したタイミングで、念願の食洗機、ロボット掃除機、そしてドラム式洗濯乾燥機を導入したそうです。
「もうこれで、家事のストレスから完全に解放されるって思ってました」
佐藤さんの言葉は、過去の私の心の声とまったく同じでした。彼女も、家電が稼働している間はコーヒーを飲んだり、子どもと遊んだり、自分の趣味の時間に充てられると期待していたそうです。実際に、手で洗う時間、掃除機をかける時間、洗濯物を干す時間は激減しました。それは揺るぎない事実です。
でも、彼女の表情はどこか晴れませんでした。話を聞くうちに、その理由が少しずつ見えてきたんです。
「食洗機、便利なんです。本当に。でも、入れる前の予洗いは必須だし、お皿の配置を間違えると洗い残しがある。食洗機に入らないお鍋やフライパンは結局手洗い。結局、シンクが完全に空になる日はほとんどないんです」
なるほど、と私は頷きました。私も同じ経験があります。食洗機は「洗う」という行為を自動化してくれますが、そこに至るまでの「判断」「準備」「分類」は、すべて人間の手と頭に委ねられているんですよね。どの食器を入れるか、どう並べたら効率的か、洗剤の補充はいつか、フィルターの掃除は?
ロボット掃除機に関しても、佐藤さんはこう語りました。
「最初は感動しました。でも、ルンバをかける日は、床に一切物を置かないようにしないといけない。子どものおもちゃ、夫の脱ぎっぱなしの服、充電器のコード…。それらを毎日全部片付けるのが、想像以上に大変で。片付けた後にルンバを動かして、終わったらダストボックスを空にする。結局、ルンバが動いている間に別の家事をする羽目になるんですよね」
これ、わかりますよね。ロボット掃除機は「掃除する」という行為は自動化しても、その前の「床の片付け」という新たな家事を私たちに課すんです。それも、「ルンバを最大限に活かすためには完璧に片付けなければ」という、無言のプレッシャーと共に。
そして、ドラム式洗濯乾燥機。これこそ究極の時短家電だ、そう思っている人も多いはずです。佐藤さんもそうでした。
「乾燥までやってくれるから、本当に楽になりました。でも、縮む服、シワになる服、デリケートな服は結局乾燥機には入れられない。それらは手で干さなきゃいけないから、結局洗濯物を干す作業はゼロにはならないんです。それに、乾燥機から出した服を畳んで、それぞれのクローゼットや引き出しにしまう作業は残る。これが、意外と時間がかかるんですよね」
佐藤さんはため息をつきました。
「結局、家電がやってくれるのは『手足を動かす作業』だけなんだなって。でも、その前の『準備』や、終わった後の『片付け』、『仕分け』、そして『メンテナンス』は全部私。さらに言えば、献立を考えて、買い物リストを作って、食材を買いに行って、冷蔵庫にしまって、期限を管理して…。子どもたちの学校や保育園の準備、持ち物のチェック、習い事の送迎、予防接種の予約…。家電がやってくれない『見えない家事』が、以前にも増して重くのしかかっている気がするんです」
家電が作り出す「新たな家事」と「見えないプレッシャー」
佐藤さんの話を聞いて、私は強く感じました。家電は確かに「特定の作業」を自動化してくれます。しかし、家事のすべてを「消してくれる」わけではない。むしろ、家電を最大限に活用するために、私たちの「思考」や「判断」、「マネジメント能力」は、以前よりも求められるようになっているのかもしれません。
例えば、ロボット掃除機がスムーズに動けるように床を片付ける「ルンバのための片付け」。食洗機に効率よく入れられるように食器を仕分けする「食洗機最適化パズル」。乾燥機にかけられないものを手で干し、残りを乾燥機にかける「洗濯物仕分け戦略」。これらはすべて、家電が導入されたからこそ生まれた、新たな「見えない家事」なんです。
しかも、家電が完璧に仕事をしてくれるからこそ、「私の準備が完璧でないとダメだ」という無言のプレッシャーまで生まれてしまう。家電は素晴らしい働き手ですが、その「ボス」である私たちは、以前よりもタスクが増えている可能性も否定できません。
佐藤さんが最後にポツリと漏らした言葉が印象的でした。
「結局、頭の中はいつも家事でいっぱいなんですよね。時短になったはずなのに、なんでだろうって、ずっとモヤモヤしていました」
彼女は、家電を導入することで「家事そのもの」が減ると期待していました。でも、減ったのは「手足の作業」であり、「頭の中の思考」は減っていなかった。それどころか、家電の管理や準備という新たな思考が加わり、さらに増えていたのです。
このモヤモヤの正体こそが、多くの共働き家庭が抱える「家事ストレス」の核心にあるものだと私は確信しました。
家電が減らせない「真のストレス」と、私たちが本当にすべきこと
佐藤さんの話を聞いて、多くの人が共感してくれたのではないでしょうか。家電は私たちの身体的な負担を減らしてくれたけれど、頭の中の「家事」はむしろ増えている。このモヤモヤの正体は、まさにそこにあると私も思います。家電は「タスクを自動化」してくれるだけで、「タスクそのものをなくしてくれる」わけではないんです。そして、さらに厄介なことに、家電を最大限に活かすための新たな「見えない家事」や「思考」が、私たちの上にのしかかっている。
思考を減らすことが、最高の時短になる
では、このループからどう抜け出せばいいのでしょうか?
私が最終的にたどり着いた結論は、シンプルです。
「本当に減らすべきは、手足の作業ではなく、あなたの『思考』そのものだ」ということです。
私たちは、家電があるからこそ「完璧に家事をこなせるはずだ」という幻想に囚われがちです。食洗機に入れる前に完璧に予洗いしなきゃ。ロボット掃除機のために床は毎日ピカピカにしておかなきゃ。乾燥機にかけられない服は丁寧に手洗いして干さなきゃ。
この「~しなきゃ」という完璧主義や責任感が、私たちの頭の中を常に家事モードにしている。家電はあなたの手足になりますが、あなたの「脳」の代わりに何かをしてくれるわけではありません。むしろ、家電を導入したことで、いかに効率よく回すか、いかに最大限に活用するか、という「新たな思考」が生まれているんです。
だからこそ、私たちは「家電に任せられる部分は徹底的に思考停止で任せる」こと。そして、「残った家事をどこまで簡略化するか」という視点を持つことが重要なんです。
食洗機に入れる前の予洗いは本当に必要? 多少の洗い残しがあっても、手洗いするよりマシじゃない?
ロボット掃除機をかける日だけ、最低限の床置きを片付ける。完璧な床を目指さない。
乾燥機にかけられない服は、クリーニングに出す、または思い切って手放す。
「理想の家事」ではなく、「今の自分たちが無理なく回せる最低限の家事」のラインを明確に引く。
これは「手を抜く」ということではありません。「思考を最適化する」ということ。
家事の「質」を少しだけ妥協する。
「これくらいでOK」というラインを、自分で引き下げる勇気を持つ。
そして、「やらない家事を決める」こと。
やらない、と決めたことに対して、罪悪感を感じない。
これが、最高の時短であり、最高のストレス軽減策なんです。
あなたの頭の中にある「家事リスト」を空っぽにする
家電を揃えても家事ストレスが減らないのは、家電が私たちの肉体的な負担を減らしても、頭の中にある「家事リスト」を空っぽにはしてくれなかったからです。むしろ、リストの項目が増えていたり、より複雑になっていたりする。
食洗機は食器を洗う。ロボット掃除機は床を掃除する。乾燥機は洗濯物を乾かす。
でも、そのすべてを「管理し、判断し、実行の準備をし、結果をチェックする」のは、依然としてあなたの脳の役割なんです。
だから、本当に解放されたいなら、家電任せにするだけでなく、その「脳の役割」をどう手放すかを考えること。完璧な家事を目指すのをやめて、もっとシンプルに、もっと大胆に家事を削ぎ落とす勇気を持つ。
「もういいや」と、諦めにも似た気持ちで完璧主義を手放した時、あなたの頭の中の家事リストは驚くほど軽くなります。
家電は素晴らしいツールです。でも、私たちを本当に解放してくれるのは、その家電をどう使いこなすか、ではなく、あなたの「心の持ち方」にある。
共働き家庭の家事ストレスは、家電を増やせば解決するものではない。本当に必要なのは、あなたの頭の中の「完璧な家事」という呪縛を解き放ち、「これくらいで十分」という、新しい心の基準を持つことだと、私は確信しています。
さあ、今日からあなたの「思考の家事」を減らす一歩を踏み出してみませんか?
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