共働き、その幻想に囚われてない?
「夫だけ昇進」は、もう過去の話にしよう。
共働きが当たり前の時代。なのに、気づけば夫だけがするするとキャリアの階段を駆け上がり、あなたには「責任ある仕事」や「昇進」のチャンスが回ってこない――そんなモヤモヤを抱えていませんか?「仕方ない」と諦めてしまうのは、あまりにもったいない。その不公平な状況、一体誰が決めたんでしょう?私たちは、ただ与えられた役割をこなすために働いているわけじゃない。この現実に、そろそろ本気で向き合う時期です。
キャリア格差は「空気」で生まれる
「妻だから」を無意識に受け入れてない?
共働きであるはずなのに、なぜか家事育児のメインタスクは常に女性側に回ってきて、そのせいで仕事での大きなチャンスを諦めてしまう。この構造に「仕方ない」と納得している自分がいるとしたら、それはかなり危険信号です。「私がやらなきゃ誰がやるの?」という義務感と、「夫の方が稼ぎがいいから」という現実的な判断。これらの感情が絡み合い、最終的にあなたのキャリアを停滞させているのかもしれません。
考えてみてください。子どもの体調不良で急遽呼び出されるのは、いつもあなたじゃないですか? 学校行事の参加は、当たり前のようにあなたの仕事になっていませんか? そして、そのために仕事の調整をしたり、残業を断ったり、はたまた昇進の話そのものを辞退したり……。これって、本当にあなたの「意思」でしょうか? それとも、社会や家庭に根付く「空気」に流されているだけなのでしょうか?
この「空気」こそが、共働き夫婦の間にキャリア格差を生み出す温床になっているんです。男性側が無意識のうちに家庭の役割分担を固定し、女性側もまた、無意識のうちにその役割を受け入れてしまう。結果として、男性は仕事に集中できる環境を手にし、女性は「家庭の制約」という見えない足かせをつけられたまま、キャリアアップの機会を失っていく。こんな不公平、誰が作り出したんでしょう? そして、誰が容認しているんでしょう?
ある共働き夫婦の「昇進のズレ」
これは、私が取材したある共働き夫婦の話です。仮に夫を裕也さん(30代後半)、妻を聡子さん(30代後半)としましょう。お二人は結婚して10年、小学生と保育園児の2人のお子さんがいます。夫婦ともに正社員として働いていて、収入もほぼ同等でした。
数年前のこと、聡子さんの会社で、彼女が長年希望していた部署のリーダー昇進の話が持ち上がりました。責任が重くなる分、残業も増える見込みでしたが、聡子さんにとってはまさにキャリアアップの大きなチャンス。スキルアップにも繋がる、魅力的な話でした。
ところが、その時期とほぼ同じタイミングで、裕也さんの会社でも、海外プロジェクトのリーダーという、これまた彼のキャリアにとって非常に重要な話が舞い込んできたんです。これもまた、激務が予想されるものでした。
夫婦で話し合いが行われました。二人の間で交わされたのは、「どちらかが無理をすると、子どもの送迎や習い事、急な発熱対応といった家庭が回らなくなる」という、至極まっとうな懸念でした。結果として、聡子さんが昇進の話を辞退し、裕也さんが海外プロジェクトに参加することになりました。
聡子さんは、その選択に納得していました。夫が大きな仕事にチャレンジできるのは素晴らしいことだし、家庭を守るという役割も、自分が担うべきだと心から思っていたからです。「家族のためだから」――そう自分に言い聞かせ、周囲にもそう説明していました。
しかし、時が経つにつれて、聡子さんの心に、小さなモヤモヤが生まれ始めます。裕也さんが海外プロジェクトで実績を出し、さらに昇進を重ねていく姿を見るたび、彼の口から語られる仕事のやりがいや成長の話を聞くたび、胸の奥にチクリとした痛みが走るようになったのです。「もし、あの時、私が昇進を選んでいたら、今頃どうなっていたんだろう?」という、具体的な後悔とも割り切れない疑問。
裕也さんは、悪気はありません。むしろ聡子さんが家庭を支えてくれることに感謝すらしていました。ですが、彼が「家庭の犠牲」の上に自身のキャリアを築いているという自覚は、ほとんどなかったでしょう。彼にとって、聡子さんがキャリアを諦めたのは、「家庭のために妻が賢明な判断をした」という程度の認識だったのかもしれません。
聡子さんは、誰にも言えない苦しさを抱えていました。自分の選択だったはずなのに、なぜか腑に落ちない。昇進を諦めたことは、本当に自分の意思だったのか? それとも、共働き家庭を円滑に回すための「空気」に、無意識のうちに従ってしまっただけなのか? そんな問いが、彼女の心を常に占めていたのです。
その「選択」、本当にあなたの意思だった?
聡子さんのエピソードは、決して特別な話ではありません。多くの共働き家庭で、似たような「選択」が日々行われているのではないでしょうか。「子どもが小さいから」「夫の方が稼ぎがいいから」「私が辞退すれば丸く収まるから」。そういった理由で、自分のキャリアパスを譲り渡してしまっていませんか?
もちろん、家族で協力し、助け合うことは大切です。しかし、「家族のため」という美名のもとに、一方のキャリアだけが犠牲になる構造は、本当に健全なのでしょうか?
「私がやらなきゃ」という思い込み。それは、もしかしたら、あなた自身が無意識に作り上げている足かせかもしれません。そして、その足かせを外さない限り、「夫だけ昇進」という、不公平な現実はこれからも続いてしまうでしょう。
大切なのは、「なぜその選択をしたのか」を深く掘り下げることです。それは、本当に心から納得した、あなたの意思による選択でしたか? それとも、周りの期待や「共働き家庭はこうあるべき」という固定観念に、知らず知らずのうちに囚われてしまった結果ではないでしょうか。この「空気」と正面から向き合い、問い直すこと。それが、共働き家庭のキャリア格差をひっくり返す、最初のステップになるはずです。
キャリア格差を「意思」でひっくり返す
あなたの「当たり前」を疑う勇気
聡子さんの話を聞いて、あなたの中に「私もそうかも」という思いがよぎったのなら、それは変化のサインです。「家族のためだから仕方ない」「夫の方が稼ぎがいいから」――そう言って、自分のキャリアの選択肢を、知らず知らずのうちに狭めていませんか? その「当たり前」とされている役割分担、本当にあなたの本心からの選択だったでしょうか。
「子どもが熱を出したら、私が休むのが当たり前」
「夫が忙しいのは、昇進がかかっているから仕方ない」
「私が家事を完璧にこなさないと、家庭が回らない」
こうした思考回路は、私たち女性が長年刷り込まれてきた「役割」の意識に他なりません。しかし、共働きである以上、その役割は夫婦でシェアされるべきものです。あなたが「当たり前」だと思っているその感情や行動は、実はあなたのキャリアを停滞させ、結果的に「夫だけ昇進」という不公平な現実を後押ししているのかもしれません。
まずは、その「当たり前」を疑うことから始めてください。
「なぜ、私がこれをやるべきなのか?」
「なぜ、夫ではダメなのか?」
「この状況は、本当に公平なのか?」
このシンプルな問いを、自分自身に、そしてパートナーに投げかける勇気を持つこと。それが、見えない足かせを外し、キャリア格差をひっくり返すための最初の、そして最も重要な一歩です。
夫婦の「対話」は譲れない戦略
「うちの夫は言っても無駄」「わかってくれない」――そう決めつけていませんか? 残念ながら、夫があなたのモヤモヤを察して、積極的に状況を改善してくれることは、ほとんど期待できません。彼らは、あなたが声を上げない限り、現状に疑問を抱くことすらしないでしょう。
だからこそ、必要なのは「対話」です。それも、感情的な不満のぶつけ合いではありません。これは、あなたのキャリアと家庭の未来を決定づける「戦略的な話し合い」です。
* お互いのキャリアパスと、今後どうしたいかを具体的に話す。
* 家事・育児のタスクを全て洗い出し、それぞれが担う「責任範囲」を明確にする。
* 子どもの急病時や学校行事など、イレギュラーな事態への対応ルールを決める。
* 「もし昇進の話が来たら、どうする?」といった、具体的なシミュレーションを行う。
ポイントは、言語化して可視化することです。「いつも私がやっている」という曖昧な不満ではなく、「平日の夕食作りと子どもの風呂入れは、週に何回あなたが担当できる?」と具体的な数字で交渉すること。「家庭を守る」という漠然とした役割分担ではなく、どちらのキャリアも犠牲にしないための具体的な行動計画を立てるのです。
この対話は、時に衝突を生むかもしれません。しかし、その衝突こそが、現状を変えるための必要な摩擦なのです。「言わなくてもわかるはず」という甘えは捨て、あなたの「意思」を、言葉と行動で明確に示してください。
行動しなければ、何も変わらない。
「夫だけ昇進」という現実に、どこか諦めの気持ちで向き合っているあなたへ。このまま何も行動しなければ、この状況は未来永劫、変わることはありません。あなたのキャリアは停滞し、自己肯定感は徐々に削られていくでしょう。そして、いつかきっと、あの時なぜ行動しなかったのかと後悔する日が来るかもしれません。
あなたの人生は、あなた自身のものです。誰かのキャリアのために、あなたの可能性を犠牲にする必要など、どこにもないはずです。共働きであることの意味を、もう一度根本から問い直してください。夫婦で協力し、共にキャリアを築き、共に家庭を支える。それが、本来あるべき共働き家庭の姿ではないでしょうか。
モヤモヤを抱えたままで終わるのか、それとも一歩踏み出して、未来を切り開くのか。
あなたの「意思」を信じて、行動してください。
「夫だけ昇進」という不公平な構図は、あなたの行動で確実にひっくり返せます。
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